月明かりの中、夕顔棚の下で親子三人が心やすらかなひと時を過ごしています。江戸の初期に描かれた国宝「久隅守景の納涼図屏風」です。
この浮世絵を観たとき不思議な哀愁を感じさせました。あどけない子供の表情、微笑ましい親子の関係に日本ではどのような子育てをしてきたのか数年前から江戸の子育てに興味を抱いてきました。
350年頃前の江戸時代では、子供は町の財産としてわが子もよその子も区別なく教え育て、人間として生きていくための最小限のことを身につけさせてきたようです。
寺小屋では「読み・書き・そろばん」だけでなく、「聞くこと・話すこと・考えること」人間として生きることの躾、人々が助け合い、お互いを思いやりながら仲良く暮らすための人格や教養も学ばせ、人や世の中に役立つ人間になることを基本としてきたようです。この時代、これほど素晴らしい子供の養育に力を注いでいた国は世界では見当たらなく、江戸時代の子育てにのめり込んでしまいました。
同時代の西欧では、子供は未完成な人間として叩くことやムチなどで痛みを与え、部屋に閉じ込め育てることがあたりまえの教育法だと思われてきたようです。しかし、20世紀の始め頃になってモンテッソーリやシュタイナーなど、子供の心や意志を育てる感覚教育法が生まれました。西欧では子供の人格や感覚を育てる教育法は100年程度の歴史なのです。
菊川英山の「すな鳥子供遊」 公文教育研究所蔵
江戸は水の都、魚とりに興じている子供たち、
子供たちが生き生きと描かれ見守る親たちの姿が微笑ましい。
私たちの現代社会、お金や利便性が尊ばれ、競争や勝ち負けが優先され、経済的な価値観が中心となって自分さえ良ければという社会になっています。そして、子供を取り巻く環境も変化し、メディアや携帯などが著しく発達し情報に振り回されています。子供の成長に合わせてゆっくりと豊かに育てることが難しくなってきたことも確かです。
最近はマスコミなどによって「いじめや虐待」未完成な人間として「怒る叩くなどの指導」が取り上げられ社会問題化しています。
江戸と言えば人間優先の社会、金やモノよりも人間力を大切にしていた、そのための子育てであったのです。
明治維新に追いつけ追い越せと生活様式や価値観も西欧化し、江戸の素晴らしい子育ての養育法もかなぐり捨ててきたようです。
私たちの生活の深層に自然と共に豊かに暮らす日本人の知恵や努力が日本人独特の感性として育ち、美意識や価値観を育んできました。その営みが層をなして潜在しています。私たちも江戸時代の子育てを人間として美しく生きる知恵として学び、現代に合った新たな子育てを始めなければなりません。
現代の子育ても自分より弱い立場の者を「いじめない・うそをつかない・約束を守る・助け合ってお互いを思いやりながら仲良く暮らす」子供たちに人間として生きる最低限の躾や知識を身に着けさせてやらねばと思うのですが。
私たちの社会問題となっている「いじめや虐待」も学校や家庭だけでの問題ではありません。
江戸時代のように町の人々も子育てに積極的にかかわり、学校や家庭を支えながらお互いに思いやりながら仲良く暮らすための術を作り上げねばと思います。それが今生きている大人たちの責任でもあるようです。
■まず・・・やらねばないないことは何でしょうか・・・
子どもたちが最初に学ぶことは親のしぐさや町の大人たちから学ぶこと、それは大人が手本となり、子供たちはそれを「まねる」ことからはじめます。
大人たちは日常生活の中で「挨拶とありがとうの感謝を言葉として表す・子供の前では夫婦喧嘩や人の悪口は言わない・携帯電話で廻りに迷惑をかけない・玄関ではチャント靴を並べる」。そんな大人の日常生活のしぐさを子供たちは見て「まねて」しまいます。
子供にとって恥ずかしくない親や近所の大人になることが先決かもしれませんね。
>>>ひげじい
この記事へのコメント
ひげじい
ご訪問ありがとうございます。
そうですね昔の話ですね。・・・歴史から何を学ぶか
大切な時期に来ているのがこの世でしょうね。
地球の環境・経済システム・心の在り方・情報とグロバル化した社会
日本の人間中心であった過去の歴史から学ぶか
世界が追い求めなければならない課題でもあると思うのですが・・・。
その中心にいるのが日本・・日本の役割
またのご訪問をお待ちしています。
このみ
皆さまお変わりないですか?
日本の文化を守りながらの、グローバル化は難しいものですね
ドラマの「とんび」主人公はちょっとハードな人だけど
人間味のある人たちに囲まれて、恵まれた環境での子育て
八重の桜をみながら、100年、150年前
かなり昔と感じてましたが
今、100歳という年齢を生きられてる方を思うと
なんだか不思議な時の経過を感じてます。
進化のスピードの速さを感じ・・・
私自身大人となずけられて数十年・・子育てとしての時期も過ぎ
反省の中に自分を見つめる日々
新たな自分育ての日々を送ってます
ひげじい
ご訪問ありがとうございます。
散る桜
残る桜も
散る桜・・・
残りの桜が新緑の芽を優しく見守るように咲いています。
まるでわが子を見守るように。
もうすぐ若葉の萌えたつ季節へとなりますね。
確かにグロバル化は難しいですね。
世界に飛び出した柔道は如何に相手を負かすか
勝ち負けのスポーツとなりました。
相撲は世界に飛び出さず、外国の若者を日本に受け入れました。
小さな力士が相手の力を利用し、大きな力士を投げる
姿は壮観ですね。
勝ち負け以上に日常の品格や勝ち方も大切にされる由縁です。
それが日本の武道として精神文化になっているようです。
最近、江戸時代の庶民のしぐさに興味が沸き
読書をしながら・・・
新たな自分磨きの日々を送っています。・・・